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2016年3月1日更新(64号)

寒夜の酒    中尾 環

朝ドラの影響大きく驚きぬ「五代さまロス」90歳までも
気の置けぬ〈焼きとりクラブ〉のメンバーはタレに魅せられ全員皆勤
母猿が二匹の小猿育てをり必死の姿申年初頭に
沖縄に霰降り来る大寒波ほどほどを知らぬ自然の異変
父母の居て多くの親戚集まりぬ賑やかなりし初春(はる)懐かしき
一人酌む祝いの酒にほろ酔いて青空に向かい今年を祈る
目標は一に健康二に健康楽しく飲んで楽しく運動
拍子木の音しか聞こえぬ暮れ夜更け世界の不穏幻のごと
大声でマイク片手に店員が煽る年の瀬不景気他所(よそ)
クリスマス・ケーキ手作りしてた頃母なる幸せ永遠(とわ)かと思いき
窓を打つ雨混じりなる北風よテレビのボリューム少し上げおり
向い席スマホではなく読書する()は快く居眠るらしき
寒夜には晩酌すすみ焼酎のビン空になりとろとろ眠る
「寒いやろ」我の手を取りポケットへそんな想い出呼び覚ますドラマ
飲める時酒飲むがグーと()に給う短歌(うた)の恩人消印は京
先ずビール次焼酎のお湯割りを最後にワイン嗚呼 丸儲け
飲み会の三日前より煮るおでん10ヶ月振り溜りし話題
リハビリの仲間と月一飲み会は互いに労り聞き方上手
丸まりてバイクのサドルでスヤスヤと三毛猫昼寝小春日浴びて
クリクリの(ひとみ)で我をジッとみる幼子隣の席におさまる
リハビリを受けつつ見上げし窓枠は〈小春日和〉と題する絵画
葉を落し枝垂れるほどに実る柿車窓の景色青空の下
亡き父母に今朝の命の有りしこと感謝し楽しく丁寧に生く
食事時サラダを先に食べること一年続け10キロ痩せる
いにしえの奈良の都に二か月も早く梅咲くゴジラ・エルニーニョ
十日過ぎプールに向かう初電車さぼりし体持て余しつつ
叶えたい夢いっぱいを書き記し叶うたび消し残るは三っ
スカートに寝押し毎日してた頃彼にドキドキおさげの私
ブランドのバッグ次々買い漁り満たされぬ心埋めしあの頃
抜いてみて踏みつけもしてまだ生える冬なお逞し庭の雑草

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