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2016年9月1日更新(66号)

梅雨と猛暑    中尾 環

庭に咲き色変りゆく紫陽花よ [移り気] という花言葉のごと
梅雨盛ん来る日も来る日も雨ばかりテレビは水害写し滅入りぬ
あーしんど遣る気も出ない食欲無い意識ボンヤリ [梅雨だる] の朝
ジャカランタという名の花あり梅雨空を一変晴れにしそうな紫
体温を越える暑さにのたうちて急ぎプールへ 魚となりぬ
猛暑日となるも見た目の涼やかさ友待つ()癒す七夕飾り
またも来る暑苦しさ増す暑き声いまはか弱い蟬の初鳴き
プール終え急ぎ帰りて部屋冷ます冷たきビールにアーッ最高 ‼
花咲けば統べて枯れゆくスズタケよ120年毎の営み
良い香り‼ 自転車止めて見廻せば演歌(うた)も飛び出す【くちなしの花】
背泳ぎの途中短歌の閃きて手を止め指折り字数かぞえる
目覚めれば見渡す限りのヒマワリよレマン湖に沿うホテルの窓辺
人生の機微語りなむシャンソンに我が時代(とき)重ね一人涙す
長友に「ボクのアモーレ」と言わしめる彼女こそ現在(いま)のシンデレラ姫
幸せな時間(とき)奪い去る憎きテロ人間(ひと)の心の計れぬ闇よ
原爆を落とした国の訪問に何を期待か苦しみぬ民
新緑の木漏れ日三筋キラキラと水面に刺さるうす暗き中
一筋のコントレール伸びる先に思いを馳せる旅好きなれば
久し振り幼馴染みとする電話呼び名も子供の頃に戻りて
春めきぬ風に誘われ帰り道ちょっと道草小粋なカフェへ
オリンピック出場きめた女子バレー粘りのプレーに胸つかまれる
雨風の窓打つ音に邪魔されて短歌の妙案ふっと度忘れ
ホーケッケッケキョ練習中の笹鳴きにハラハラしつつ思わず応援
横たわり見上げる窓の網戸越し満月初夏の夜空を照らす
五月晴れ山の様なる洗濯物干しつつ鼻歌知らず飛び出す
春の京ポカポカ陽気に誘われて雲雀真上へ蝶花巡る
日本の良さは何かと問われれば平和・安定?ひと昔前
ガミガミと子を叱りつつ出た電話「あーら、こんにちは、久し振り、お元気?」
氷上の華麗な舞いに引き込まれいつしか涙 ヤッターの拍手
バタバタと日々の暮らしの忙しさ偶の暇さえありがたき哉

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