2016年9月1日更新（66号）

日々の思い　　　　石隈かおる

初雪の舞い散るさまを見るために窓開け放つ寒さ怺えて
太陽(ひかり)さす空一面のイワシ雲風に吹かれてウロコがゆれる
福は内鬼の豆まき人は外描(か)き方次第でドラマが変わる
シャンソンの語り歌など聞くうちに心はいつか異国の空へ
宝塚観た後日に聞く講義介護ケアとは　夢もひととき
お義母さま元気なだけで「うれしい」と亡義父の年金預かる嫁は
陽光(ひかり)うけ学生帽の美青年黒きマントが風に揺れたる
夕ぐれの春の野道の片隅に名前も知らぬ紫の花
古都の奈良、吉野の山の櫻花散りゆくさまもどこか違いし
『つなぐ』読み死者と話が出来るなら一緒に居られるか母に聞きたい
カフェにて老いたる友のその姿吾を見るよで並んで座る
メモる癖友にほめられ照れるけど後に見たれば意味は解らず
風吹けばペットボトルの鳥よけが畑の上でカラカラと舞ふ
風そよぎ池面も揺れる五月晴ベンチに寝そべり心空(から)にす
五月晴れ風にさそわれ薄着して光の街を軽やかにゆく
楽だからシルバーコースにすると云ふ金剛山の谷川の道
ふさふさの栗色髪を編み上げてテキパキ動く美容院(みせ)のスタッフ
友達のそれぞれ違う考えをいいとこ取りして我が道を行く
一人身は少し淋しく二人ではちょっと疎(うと)まし男と女
老いてゆく未来(さき)は恐いと目をそむけ思い出の中に友は住みいる
幸せも不幸も自分で作るかも少しずらせば心静かに
沖縄にパスポート要(い)る国が有る　アソコはアメリカ、カリフォルニア州
スイミング終えた我が娘を待ちし父やさしき手付きで日焼け止め塗る
昼下りアートをたしなむ彼の君は鏡も見ずに口紅をさす
生きようね、命短い私たち　悲鳴にも似て聞く蝉時雨

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