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2016年6月1日更新(65号)

つつじの回廊    馬宮 敏江

花みずき咲き揃いたる並木道ピカピカ園児のおかえり賑わし
移植せし能勢の里より姫桧扇咲いてみだれて庭席捲す
山ぼうし白じろ揺れる校舎の窓新学期の声五月の空に
僥倖はふと訪れて友と遊ぶ大和川辺の躑躅の回廊
女学生の一団どっと乗り込みぬ車内に溢れる春のさざめき
今頃は何処の国の空ならん新婚旅行に孫たちし空
巣立つべき者巣立ちゆき息子()の夫婦わたしと三人(みたり)もとの形に
彼岸会の声明もれくる蓮経寺仏も見給ううやしだれ梅咲く
長らえばしがらみ多くこの人も無事に(いま)すかあの人たちも
前の席坐して一番大あくび車内うらうら欠伸をもらう
盛り上る椎の若葉に楠若葉まぶしすぎいる五月の憂うつ
生駒越え伊賀路をひたすら息子()らと行く採りたて野菜売る『道の駅』
無農薬 朝採り野菜に列をなす爆買いを見ぬ伊賀の里山
春浅きまほろば大和は霞のなか万葉人となりて佇む
天を仰ぎ親子の情を語り拳ぐ大夫に涙す妹背山の段
悲恋に泣く雛鳥操る蓑助の幻消えず昨日も今日も
ふわふわの大阪府大のバタビアレタス マグロに追いつけ(いつ)玉買いぬ
一瞬を陽の射す窓につっとよぎる何鳥ならん急ぎ出て見る
歌会終えひと時憩うレストラン恋に政治に話題ひろがる
しばしばを底なき鬱に迷う時元気を貰う歌会のひと日
亡き夫の愛書の栞はらり落つ「街道を行く」ふる里阿波みち
ヨタヨタと歩む地下街吾が横をしなやかな脚が追い越してゆく
若狭路の山川登美子(とみこ)の墓を訪れぬ晶子の街より来ましたと告ぐ
若狭より大和に送る水の道鵜の瀬の流れ清き音たつ
河内、摂津、難波を堺す三国ケ丘 陪塚、古墳ロマン漂う
陪塚の小さき木立の夕ぐれは宿る小鳥の出入りかしまし
音もなく降る花散らし憂き午後を無沙汰の友に文したためん
五年目にようやく二つの花開くま白きカラーに おはよう 朝ごと
美人アナが 先ほどの(ヤツ) 真顔にて矢張り気になる日本語が変
賜りし命の尊さ何故説かぬ原因ばかりを追いかける記事

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