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2024年1月1日更新(89号)

佐渡ヶ島     鈴木 禮子

北国のお嬢様とし生まれきて死出の旅にも(ひそ)かなる笑み
亡き母の(おだ)しく(なお)きデスマスク 今老い痴れしわが胸にあり
(あね)さんより若しと褒める母の像 娘の手に成るデッサン冴えて
佐渡ヶ島を遥かに望む砂浜に立ち尽くしたり日暮れ行く頃
みな故人 みな夢の中 過去といふ魔法の中で(くち)は閉ざして
ふっつりと年賀の(ふみ)も絶え果てぬ父母の故郷の北陸遠し
新潟の汽水流るる信濃川再び我が逢ふこともなく

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