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2022年9月1日更新(85号)

志賀の宿   馬宮 敏江

「模様します」声かけくれる国なまり雨雲重き古い町並み
良いおしめりですね お国言葉でご挨拶雨傘二つ並んで過ぎぬ
屋根を覆う柿の樹下の縄ぶらんこ空蹴り上げた無心なりし日
ひたすらに猛暑に耐える日日乍ら夕陽の窓に晩夏のけはい
デイゴの花、夾竹桃も火の色す「ナガサキの日」も満開なりしを
きらめきて楠の若葉の盛り上がる こんな平和があると言うのに
日に幾度保険勧誘なる電話 昭和ひとけた出すと受話器を置く
土師(はじ)の里、陶器町と名を残す 土器の欠片に古代の暮らし
ベランダにカナリヤの声すき通る うるさがる人可愛いと云う人
鳴くからに暑さかき立て蝉の声テノールのありアルトもありて
校庭の隅に揺れ揺れジャガイモの花「関大ファーム」の立札三つ
涸れ涸れの大学ファームの茄子・胡瓜生き返りたり雷雨一過に
見守ってやらねばチャンと働かぬ二十年経し洗濯機「あお空」
窓際の竹群ゆっくりそよぎ出す時間(とき)を違わず十時の風に
狭庭には狭庭に合わせ花の咲く桔梗一輪青のはかなし
あの庭にエゴの花の咲くならん遠廻りして夕ぐれの道
匂いたつ新茶を供え麦穂の供花 ご先祖様夏が来ました
陽の落ちてツクツクホーシ・寺の鐘 この故郷にも一度会いたし
ビードロの音こそよけれ風鈴の「萩のみどり」と云ふ風連れて
さざなみの志賀の湖畔に宿りいて落暉に染まるさざなみに酔う
戦国の乱世に耐えし近江の野に早苗田わたる風もゆたかに
生きてあれ夢なら覚めよひたすらの祈りかなわず無念の深し
(おうち)の花ハラハラ零れ散り敷けよ大き星落っ七月八日
昨日の事夢でありしか青葉風流れる向うに安倍さんの影
安倍さんを守り得ざりし責任は? 転化の(さま)に統一教会

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