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2019年6月1日更新(74号)

令和・令和    馬宮 敏江

白蓮の蕾を濡らす絹の雨いまが一番四分の膨らみ
牧水の春のはじめと詠みしまま今日しみじみと如月の雨
群をなし飛び立つさまにえびね蘭三年を経て白き花咲く
積年の夢かないたる世界遺産 仁徳、履中、反正凛として
(みささぎ)のめぐりの小さき陪塚に夕べ宿りの鳥かしましき
青葉深む欅並木のトンネルを抜けて真向う仁徳御陵
花冷えと夏日と交互のせめぎ合い桜散る道ランドセルの群れ
〝なごり雪〟 ひびき良けれど春半ば北海道に桜何時の日
ひたすらに桜咲け咲けもう一輪見守る職員衿立てながら
遂に咲く開花宣言たかだかと〇ホッとしました〇職員の笑み
雨宿り、千原桜、紅手鞠〇造幣局の夜桜に酔う
神山は卑弥呼在せしと伝えこし阿波より土佐へ続く仙道
「出ておいで白菜会(八九歳)を開きます」変わらぬ文字の招待の文
それぞれの形に芽吹く鳴子百合・擬宝珠鋭くつんつん揃う
何事の不足はあらんさんざめく夜桜に酔う日本列島
回転ずし指の操作で会計までもう一人では鮨屋も行けぬ
五月空和泉の山なみくきやかに「道の駅」指し車走らす
取り落す薬一錠見当たらぬ落とせるものを探すは難し
嫁ぎし娘の残し行きたる志野湯呑食器棚にドンと居座る
孫、曾孫十人揃う夕餉の席大型連休かくも賑わう
五歳児のママに叱られ一粒のこぼす涙のダイヤとひかる
生きんとて戦いていん息子()の手術四時間を経し長き一日
病癒え息子を囲む子ら孫らかしましけれど灯の暖かし
新しき御代の(あした)を注ぐ雨大内山の若葉かがやく
平成の終りを惜しむ国中に人々あふれ平和の願い
はからずも昭和、平成と駆け抜けて令和の御代をまた生きんとす
嫋々と千代田の森に透りゆく(きさい)の宮のみ歌の調べ
令和と共にブームの万葉集〇采女の袖吹き返す〇に魅せられし日
令和婚。令和の梅雨入り。何事も令和。令和のひびく六月
ひと筋に昭和・平成・令和を生き五歳のひ孫のハグを頂く

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